大規模修繕の周期12年は古いのか|最新の目安と延長のメリット・デメリットを解説

大規模修繕の周期12年は古いのか|最新の目安と延長のメリット・デメリットを解説

マンションの大規模修繕周期は12年とされてきましたが、近年15年や18年周期への延長も注目されています。

本記事では、神奈川の防水プロフェッショナルである『大進双建』が、国交省のガイドラインや材料の耐久性を踏まえ、最新の周期の目安を解説します。

また、周期延長のメリットとデメリット建物の種類別の違いにも触れ、適切な周期設定のポイントをお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。

 

このコラムのポイント
  • マンションの大規模修繕周期は約7割が12~15年で、13年が最も多い傾向にあります。
  • 建物の立地条件や状態、施工品質によっては、15年や18年周期への延長も可能です。
  • 耐久性の高い材料の使用や定期的な点検・メンテナンスで、建物の長寿命化が図れます。

 

マンションの大規模修繕周期の目安

大規模修繕周期を検討しているマンション

マンションの大規模修繕周期について、国土交通省の調査によると、以下の傾向が見られます。

大規模修繕の周期 割合
13年 最多(23.1%)
12年 2番目(18.8%)
14年 3番目(15.4%)
15年 4番目(11.1%)

 

全体の約7割が12~15年周期で実施されているのが現状です。

〈引用〉国土交通省 令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査

ただし、これはあくまで平均的な目安です。

マンションの立地条件や使用されている材料日頃のメンテナンス状況によって、適切な周期は変わります。

 

大規模修繕工事の内容については、以下で詳しく解説しています。

>関連リンク:大規模修繕工事のすべて|内容や期間、トラブル対策まで徹底解説

 

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大規模修繕工事が12年周期に設定される理由

大規模修繕の防水工事中の屋上

マンションの大規模修繕が一般的に12年周期で設定される理由には、以下の要因があります。

  • 国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」の影響
  • 塗料や資材の劣化タイミング
  • 全面打診調査の時期と重なるから

順番に解説します。

国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」の影響

国土交通省が発表している「長期修繕計画作成ガイドライン」は、外壁塗装や屋上防水などの大規模修繕工事の周期を12年程度としています。

〈引用〉国土交通省 長期修繕計画作成ガイドライン

ただし、12年という期間はあくまで目安であり、マンションの仕様や立地条件に応じて修正することが前提です。

たとえば、海沿いのマンションでは塩害の影響で劣化が早まる傾向にあり、より短い周期で修繕が必要になる可能性があります。

一方で内陸部の風当たりの少ない場所では、12年以上の周期でも問題ない場合もあります。

塗料や防水層の劣化タイミング

マンションに使用される塗料の寿命は、一般的に12年程度と言われており、塗料の寿命が大規模修繕の周期設定に影響しています。

12年以上経過すると、防水層の劣化・塗料の浮き・ひび割れ・欠損などが進行し、建物を十分に保護できなくなる可能性があります。

屋上防水や外壁の劣化が進むと、雨水の浸入や外壁の剥落などの問題につながる恐れがあるので、防水層や塗料が本来の機能を失う前に修繕するのがポイントです。

全面打診調査の時期と重なるから

建築基準法で義務付けられている調査の一環として、12年ごとに外壁の全面打診調査が必要とされています。

全面打診調査では、外壁のタイルやモルタルの浮きや剥落の危険性を確認します。

全面打診調査には足場の設置が必要となりますが、設置には多額の費用がかかります。

調査と修繕を同時にすることで、コストを抑えられるのがメリットです。

 

以上3つの理由から、多くのマンションで12年周期の大規模修繕が採用されています。

しかしマンションに適した大規模修繕の周期は、建物の状態や使用されている材料、立地条件などによって異なります。

専門家による定期的な点検を実施し、マンションに合った修繕計画を立てることが大切です。

 

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15年や18年周期へ延長できる可能性

大規模修繕のアスファルト防水工事中の屋上

条件によっては大規模修繕の周期を15年や18年に延長できる可能性があります。

一般的に12年周期とされる大規模修繕ですが、建物の状況によっては、さらに長い周期で実施できるケースも。

ここでは、周期延長の可能性とその条件について詳しく解説していきます。

まず、周期延長が可能になる主な要因は以下の3つです。

  1. 建物の立地条件
  2. 建物の状態
  3. 施工品質

たとえば、海沿いなどの劣化が進みやすい環境にあるマンションは12年周期が適している可能性があります。

一方で、内陸部の住宅地にあるマンションなら、外壁や設備への負荷が少ないため、15年や18年周期でも問題ない可能性も。

定期的に点検やメンテナンスをしているマンションでは、建物の状態が良好に保たれやすいため、大規模修繕の周期を延ばせる可能性が高くなります。

さらに、初期の建設時や前回の大規模修繕時の施工品質も重要な要素です。

高品質な施工であれば、建物の劣化速度を抑えられ、結果として修繕周期を延ばすことにつながります。

周期を延長するための具体的な方法としては、高耐久の材料を使用することが挙げられます。

(例)

  • 高耐久の屋上防水
  • 高品質なシーリング材
  • 長寿命の外壁塗料 など

耐久性の高い材料を使用することで、建物の寿命を延ばし、大規模修繕の周期を延長できる可能性が高まります。

さらに、大規模修繕の周期延長は、長期的に見ればコスト削減につながる可能性があります。

ただし周期延長を検討する際は、建物の状態を把握した上で、適切な判断が必要です。

専門家による詳細な建物診断を依頼し、慎重に判断しましょう。

大規模修繕の周期を延長するメリット・デメリット

大規模修繕工事にて通気緩衝シート施工中の屋上

大規模修繕の周期を延長することには、メリットとデメリットの両方があります。

ここでは、周期延長によって生じる利点と注意点を解説します。

周期を延長するメリット

大規模修繕の周期を延長することには、以下のメリットがあります。

メリット 内容と効果
コスト削減
  • 修繕回数の減少により総費用を削減できる
居住者のストレス軽減
  • 工事に伴う騒音・振動などの頻度が減少する
  • 居住者の快適性が向上し、工事に関するクレームも減少する可能性がある
資金準備期間の延長
  • 修繕積立金の積立期間が延長されるため、月々の積立金額を抑えることにつながる

 

大規模修繕の周期を延長することで、コスト削減と修繕工事の回数を減らせるのがメリットです。

たとえば、12年周期を18年周期に延長すれば、36年間で2回の修繕で済むことになり、3回必要だった場合と比べて費用を削減できる可能性が高まります。

周期を延長するデメリット

大規模修繕の周期延長には、注意すべきデメリットもあります。

以下の表で、主な3つのデメリットとその影響、対策をまとめました。

デメリット 内容と効果
劣化の進行リスク
  • 建物の劣化が進行するリスクが高まる
  • 外壁の剥落や雨漏りなどの問題が深刻化し、建物の構造に悪影響を及ぼす可能性がある
緊急修繕のリスク増加
  • 計画的な修繕の先送りにより、予期せぬ故障や不具合のリスクが高まる
  • 緊急修繕は計画修繕より高額になる可能性がある
住民満足度の低下
  • 建物外観や設備の劣化によりマンションの美観が低下する
  • 住民満足度が下がる可能性がある

 

大規模修繕の周期を延長する場合は、デメリットを最小限に抑えるための対策が重要です。

たとえば、定期的な点検の徹底や、小規模の修繕により建物の劣化を抑制できます。

また高耐久の材料の使用により、延長後も建物の性能を維持しやすくなります。

適切な修繕計画を立てるためには、専門家による建物診断と、管理組合での十分な議論が欠かせません。

長期的な視点で建物の維持管理を考え、マンションに最適な周期を選択しましょう。

 

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